2020.05.25

エアロダイナミックハンプと、その歴史

あなたは、お気に入りのコースのメインストレートを走っていて、スピードメーターは時速250kmをはるかに超えています。
タンクのところ隠れていて、少しの間、息を整えて筋肉をリラックスさせることができる。そんな感じです。

いずれにしても、そこに完璧なエアロダイナミクスと、ヘルメットとスーツの一体感があれば、ストレスを感じることなくレースに集中できます。

しかし、昔からそうだったのでしょうか?

1980年代の終わりまでは、全く違いました。モーターサイクルの空力学は初歩的なもので、ウェアやプロテクターのメーカーはまだ調べ始めてもいませんでした。
ストレートで体を正しい位置に保つことは、簡単ではありませんでした。特に頭は左右に動きがちで、首の筋肉に力を入れて、真っ直ぐに保つ必要がありました。

1988年、ダイネーゼのライダーのスーツに初めてハンプが付きましたが、しかしこれはどう考えても、空力のために導入されたとは言い難いものでした。
そもそも安全性を考慮したもので、素材も発泡ゴムで作られていました。

バックプロテクターの延長線上にある、ハンプの登場

1980年代の終わりは、まだバックプロテクターの模索の時代でした。
バックプロテクターはその10年前にサーキットでデビューしており、モーターサイクル用初の個人保護用具として認可されたプロテクターであり、革命でした。

しかし、首がある方向に曲がると頚椎を痛める可能性があり、しっかり頸椎を伸ばすことはできないなど課題も多かったのです。

そこでダイネーゼがこの問題の解決策として開発したのが、バックプロテクターでは届かない部分を保護するための柔らかい素材で作られたハンプでした。

高密度発泡ゴムを使用し、衝撃吸収性に優れ、ライダーの動きを妨げない形状にすることで、最大限の自由度と快適性を確保しました。

1988年にボローニャ出身のプロライダー、ピエールフランチェスコ・チリが初めてレースで着用し、GPの最高峰である500クラスでトップ10入りを果たしています。

しかし、ハンプの可能性が十分に評価されたのは数年後のことでした。肘で地面をこすった初のプロライダーとして歴史に名を刻んだジャン・フィリップ・ルギアが、このハンプの秘密を明らかにしたのです。

エアロダイナミック研究

フランス人ライダーは、ハンプ付きの新しいスーツを試着した後、高速走行時に頭の動きがより安定していることに気付きました。

頭の動きを意識する必要がないので、集中力の持続と、エネルギーの節約にもつながりました。
各セッション終了時には、首周りの疲労が大幅に改善され、パフォーマンスと安全性の面で、大きな効果を発揮しました。

この時からハンプは、空力性能と保護性能、2つの観点から研究され、多目的なデバイスとなり、風洞での研究の結果1990年代半ばに形状がアップデートされました。

新しいハンプは、タンクとヘルメット、そしてライダーの背中との一体感を高めるために、より長く、より先が細く現代的なデザインになりました。

パッキング技術。D-air®、プロコムなども

ハンプは、新しい時代の到来に伴い、さらに重要な役割を果たすようになりました。

ダイネーゼD-air®のテストでは、エアバッグシステムのコントロールユニットやセンサーを格納するため、ハンプを使用することになりました。
こうして、技術を詰め込んだコンテナとなり、次々と新しい用途に使われるようになったのです。

試作段階で終わったスーツの中には、背中のこのボリュームを利用して、ライダーのバイタルサインをモニターするための多くのセンサーを搭載した、高機能インナースーツ「プロコムシステム」のセンサーを収納するものもあったほどです。

その後、試作段階で止まっていたクーリングシステムを内蔵したスーツが登場し、レースでの熱を逃がすため、ハンプ部には純正ラジエーターが採用されたこともありました。

D-air®のコントロールユニット、プロコム、前代未聞のラジエーターに続いて、ハイドレーションバッグを収納するためのスペースが設けられました。

今でもプロライダー達は、新しいハンプに内蔵されたハイドレーションシステムを介して、ヘルメットにチューブを接続し、コース上で直接水を飲むことができます。マレーシアのような暑い気候のグランプリでよく使われています。

最新のハンプ:セーフティLEDライト

最新の開発は2016年。新しいMugello Rスーツが発表されました。
そこには、D-air®コントロールユニットやハイドレーションバッグと同様に、Mugello Rスーツのハンプには、転倒時に点灯するLEDフラッシュライトが組み込まれており、後方からせまるライダーたちに対する視認性を高め、さらなる追突事故を防ぐ役割をもっています。

30年以上の間に、ウェアやプロテクターは飛躍的な発展を遂げてきました。
ハンプも例外ではありません。

単なる発泡スチロールから始まり、今やプロのライダーやファンのために、サーキットに不可欠なソリューションを提供するようになりました。