2022.07.19

America’s Cup(アメリカズカップ):伝説のセーリング選手による直接対決

America's Cup(アメリカズカップ)の前に開催されるPRADA Cup(プラダカップ) は、非常に高度な技術が求められる過酷なレースです。

それは、AC75クラスという海軍技術の粋を集めた船と、それを操るクルーとの真っ向勝負

そこでは、数年前には夢物語としか思えなかった時速100キロの高速艇が登場し、さらなる進化を遂げています。

しかし、このような最先端のテクノロジーが搭載された船には、チームワークとクルー一人一人の能力が必要不可欠です。

特に際立って有名な2つのチーム、「ルナ・ロッサ プラダピレリ」「イネオス・チーム・UK」が、エミレーツ・チーム・ニュージーランドとチャレンジャーの座をめぐって激突する場面を見てみましょう。

ルナ・ロッサプラダピレリの選択

”ジミー・スピットヒル” とともに「ルナ・ロッサ・プラダ・ピレリ」の舵を取る”フランチェスコ・ブルーニ” は、イタリア派の最も優れた代表者の一人です。

彼は、スピットヒルや他のチームとともに、プラダカップ決勝で「イネオス・チーム・UK」のイギリス人を倒し、アメリカズカップ決勝でエミレーツ・チーム・ニュージーランドに勝つことを目標としています。

イタリアチームがヘルムスマン(操舵手)を2人体制にしたのは、タックやジブのたびにボートの両側を素早くカバーする必要があるためです。

通常の帆船では、操舵手は片側から反対側へ移動しますが、AC75クラスでは、高速で発生する空力的な乱流を抑えるために、本物の壁で通路を塞いでいます。

唯一移動可能な通路はメインセイルの後方ですが、この場合、数秒の間、舵取りができなくなります。

そこでルナ・ロッサプラダピレリは、あらゆる状況下でもボートを最大限にコントロールする方法を選択しました。

それは、風上にいる操舵手がボートを誘導して、風下の操舵手は「フライトコントローラー」として、自分の位置からは見えないものをチームメイトに知らせ、ライバルセントの交差状況や進路県について報告をするという方法です。

パレルモの “チェッコ・ブルーニ” は、オリンピックレーザー級で世界チャンピオンになり、レーザー級、スター級、49er級でイタリア代表としてオリンピックに出場しました。

その最後を飾る舞台が、最も速く華麗なボートが集まるオリンピッククラスです。

彼は様々なクラスで7つの世界タイトル、5つのヨーロッパタイトル、15の国内タイトルを持ち、1996年のアトランタで開催された最初のオリンピックを含め、3つのオリンピックにも参加しています。

ルナ・ロッサでの活躍は、2003年のLouis Vuitton Cup(ルイ・ヴィトン・カップ)に始まり、2007年まで続きました。

ブルーニは2011年から2013年のアメリカズカップ・ワールドシリーズと、2013年チームが撤退することとなったチャレンジのためにイタリアチームに復帰し、2021年ルナ・ロッサで4回目、通算5回目のアメリカズカップ参加となりました。

何故アメリカズカップのクルーにはプロテクションが必要とされるのでしょうか?

アメリカズカップのセイルボートはここ数年で進化を遂げ、海面を時速100キロで走行するようになり、クルーは新たな、そして予期せぬリスクにさらされることになりました。

あのスピードで水面に落ちるのは、サーキットのアスファルトに衝突するのと大差ありません……。

イネオス・チームUKの伝説

Ineos Team UK(イネオス・チームUK)のチーム代表兼スキッパー(艦長)である“ベン・エインズリー卿“は、英国チームの大御所であり、彼の使命は、1851年にイギリスがアメリカに奪われたアメリカズカップを故郷に持ち帰ることでした。

1851年以来、このカップがイギリスに戻ることはありませんでした。

ベン・エインズリーは、オリンピック史上最も成功したセーラーであり、当時19歳で1996年のアトランタ大会を皮切りに、5つの大会に出場し、メダルを獲得しました。

この時、彼は銀メダルを獲得し、その後4大会連続で金メダルを獲得する連勝記録が始まりました。

チェッコ・ブルーニ自身の言葉を借りれば、彼はまさに生きる伝説なのです。

「私は彼を深く尊敬して憧れています。ベン・エインズリーのような人は、2、3人しかいない。」

2013年のアメリカズカップ出場は、歴史に刻まれました。

第34回大会のタイトル防衛戦では、オラクルチームUSAは1-8というスコアでチーム・ニュージーランドの後塵を拝していましたが、土壇場で招集された彼はアメリカチームをスポーツ史に残る驚異的な逆転劇に導くことに成功したのです。

エインズリーの指導とスピットヒルの協力により、オラクル・レーシングはニュージーランドチームの6連続マッチポイントを克服して同点に追いつき、最終的には9勝8敗という驚くべき結果を収めました。

ブルーニとエインズリーは長い間ライバル関係にありましたが、オリンピックではイタリア人が勝ち残ったことは一度もありません。

2021年プラダカップ決勝大会は、セーリング界の類まれな才能が直接対決し、その勝者がプラダの提供する第36回アメリカズカップの決勝大会に出場するまたとない機会なのです。

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