2025.05.14

MEET THE SAMURAI-ダニ・ペドロサ選手ロング・インタビュー

2025年4月4日、アジア最大級のフラッグシップストアとしてリニューアルオープンを迎えた「ダイネーゼ大阪」。

そのオープニングセレモニーに、MotoGPレジェンドであり、今年からダイネーゼのグローバルアンバサダーに就任したダニ・ペドロサ選手が来日しました。

ペドロサ選手にとって、日本への訪問は実に6年ぶりとなります。今回は、ダイネーゼの魅力と今のMotoGPについてお話を伺いました。


ダニ・ペドロサ「19年ぶりのダイネーゼは、変わらずに美しかった」


Dani Pedrosa
プロフィール

ダニ・ペドロサ / Dani Pedrosa #26
1985年9月29日生まれ、スペイン出身

KTM Factory Racing Test Rider。2001年から世界選手権125ccクラスに参戦し、2003年に年間5勝を挙げ125ccクラスタイトルを獲得。
2004年から250ccクラスに参戦を開始し、2004年、2005年と250ccクラスチャンピオンを2連覇。
2006年にレプソル・ホンダ・チームからMotoGPクラスへの参戦を開始し、2018年に現役を引退。2019年からKTMのテストライダーに就任。
世界選手権デビュー以来、125cc、250cc、MotoGPで通算54勝を記録し、MotoGP史上歴代7位に位置するレジェンドライダーだ。

「やっと日本に戻ってこられたよ、6年ぶりかな。」
Dani Pedrosa with Noby

お話を伺ったのは、ダイネーゼ・ジャパンのアンバサダーを務める上田昇(ノビー)さん。

ダニ・ペドロサ選手と上田昇(通称ノビー)さんは、かつて125ccクラスで同じ時代を戦った旧知の仲。ダニ選手が125ccに参戦していた2001年、ノビーさんは現役最後の年である2002年を迎えており、レースを通じて交流がありました。そんなふたりが軽く挨拶を交わすと、自然と会話が始まりました。


上田昇(以下、ノビー):ダニ、日本へようこそ。久しぶりの来日だよね?

ダニ・ペドロサ(以下、ダニ):そうなんだ、本当に久しぶりだよ。最後に来たのは2018年、現役を引退した年の「Honda Thanks Day」(ツインリンクもてぎ)だったから、もう6年ぶりになるね。日本の文化も人も大好きだし、ファンもたくさんいるから本当はもっと早く来たかったんだけど、なかなか機会がなくて…。今回ようやく来ることができて、とても嬉しいよ。

ノビー:大阪に来たのは初めて?

ダニ:実はMotoGPがまだ鈴鹿で開催されていた頃、空港の近くに少しだけ滞在したことはあるんだけど、大阪の中心部に来るのは今回が初めてだよ。 少しだけ観光もできたし、日本語もちょっとだけ覚えていて、「ココデスカ?」とか「アッチデスカ?」って言うと、日本の人がすぐ反応してくれるからとても便利なんだ(笑)。

ノビー:日本人は英語が苦手だからね(笑)。

ダニ:日本語は、青山博一(今はIDEMITSU Honda Team Asiaの監督)に教えてもらったんだ。僕が250ccクラスに上がったときのチームメイトでね(Telefonica Movistar Honda 250)。

ノビー:そうそう、ダニと博一が250ccにステップアップしてきた時、アルベルト・プーチ(現Honda HRC Castrolのチームマネージャー)と一緒にトレーニングしていたよね。当時は博一が、必死にダニについていこうとしていたのをよく覚えているよ。自転車とかフィジカルなトレーニングはダニが先駆者だもんね。

ノビー:ところで、大阪の印象はどうですか?

ダニ:とてもきれいで、すごくモダンな街だと思う。清潔感があって、すべてが新しく感じるね。

ノビー:なにか名物は食べました?

ダニ:まずはお寿司を食べたよ。それからサラダとか、軽いものを少し。

ノビー:大阪らしいものはまだ試してないんだね、たこ焼きとか。

ダニ:食べてみたい!時間があれば、ぜひチャレンジしてみたいね。

ダイネーゼのスーツを着るのは19年ぶり
Dani Pedrosa with Noby

ノビー:19年ぶりにダイネーゼに戻ってきたわけですが、久しぶりの着心地はどうでしたか?


ダニ:僕がダイネーゼを着ていたのはMotoGP初年度までだったので、今年のセパンテストで約19年ぶりに袖を通したことになります。そのときに驚いたのが、「キャラクター(特性)がまったく変わっていなかった」ということです。もちろん、それはとてもポジティブな意味でね。つまり、昔からある良さをちゃんと維持しながら、そこに最先端の技術が加えられている。今のMotoGPは、昔よりずっと速くなっているけれど、その進化に対応しつつも、当時と変わらない“着心地”で走れるというのは、本当に素晴らしいことだと思います。

というのも、安全性を追求すればするほど、本来は動きにくくなるものなんです。でもダイネーゼのスーツは、動きやすさと高い安全性を両立している。それに加えて、高品質で、柔軟性もあって、着心地も良い。ライダーにとって、ありがたい要素がしっかり揃っていると感じました。まだテストで数回しか使っていないけれど、それだけでも十分に良さを実感できましたよ。

ノビー:ダニは感覚がすごく繊細だから、レザースーツのちょっとした違いにもすぐ気づくんだよね。その感覚がマシン作りにも活かされてるし。ちなみにD-Airは体験した?

ダニ:いや、テストではクラッシュしなかったから(笑)、まだ本格的に体験はしていないんだ。でも、125ccクラスに乗っていた頃は、スーツは軽量化を優先していて、最低限のプロテクションしかなかったんです。それがクラスが上がるにつれて、スーツにはより高い保護性能が求められるようになり、エアバッグ追加されて、どんどん重くなっていった。それでもダイネーゼのスーツはとても快適で動きやすさが損なわれないのがすごいと思う。自由度が高くて、自然な感覚で着られる。しかも、見た目も本当に美しいんだよね!

ノビー:エアバッグが搭載されたことのメリットって、なにか実感していますか?

ダニ:間違いなく、大きな衝撃や高いGのような強い力から身体を守ってくれること。それが一番のメリットだね。それに、この技術自体がまだ進化の途中にあるというのもポイント。多くのライダーが実際に使用することで、データが蓄積されて、さらに進化していくと思うんです。 たとえば「どの部位をもっと守るべきか」とか「どこに改良の余地があるのか」といったことも、リアルなデータを通じて見えてくる。だから、使えば使うほど、製品が良くなるサイクルが生まれるんです。

僕はもう10年以上エアバッグを使っているけれど、本当に素晴らしい技術だと思っています。たしかにまだ価格は少し高いけど、サーキットだけじゃなくて、ストリート向けにも良い製品が増えてきている。今後、さらに多くのライダーが使うようになれば、反応時間の短縮や保護範囲の最適化といった進化が進み、それが安全性を飛躍的に高めてくれるはずだよね。

ノビー:たしかに、むしろストリートこそエアバッグが必要だよね。たくさんの人が使うようになれば、データも集まって、安全性がもっと高まる。そうすれば、もっと身近な存在になっていく日も近いかもしれないですね。

KTMの開発を支える今、ダニ・ペドロサが注目するライダーとは

Dani Pedrosa with Noby

ノビー:ダニがKTMのテストライダーになってから、KTMは随分と強くなったよね。今年はライダーも監督陣も大きく変わって、どんな雰囲気になりそうですか?

ダニ:正直に言うと、今はチームにとってちょっと難しい時期なんです。というのも、マーベリック(マーベリック・ビニャーレス/Red Bull KTM Tech3)やエネア(エネア・バスティアニーニ/Red Bull KTM Tech3)といった実力あるライダーや、アキ(アキ・アジョ/KTM Factory Racing)のような優れたマネージャーが新しく加わったものの、その一方で今冬にKTMの財政面が少し複雑になってしまって…。

その影響で社内も少し慌ただしくなり、チーム全体の集中力や一体感がやや欠けてしまった時期があったんです。将来への不安もあって、なかなか物事がスムーズに進まなかったのは事実ですね。でも今は、その厳しい時期を少しずつ乗り越えて、チーム全体で気持ちをひとつにして、再スタートを切っているところです。開発も少しずつ軌道に乗ってきているので、今後に期待してもらえたら嬉しいです。

ノビー:今年、ワイルドカードでの参戦予定はありますか?

ダニ:うーん… 今のチームの状況を考えると、ちょっと難しいかもしれませんね。

ノビー:今シーズンのMotoGPで、カテゴリーを問わず注目しているライダーがいれば教えてください。

ダニ:MotoGP以外なら、Moto3ではルーキーのマキシモ・キレス(CFMOTO Gaviota Aspar Team/#28)と、アンヘル・ピケラス(FRINSA MT Helmets MS/#36)、それにMoto2のディオゴ・モレイラ(Italtrans Racing Tea/#10)ですね。この3人はとてもすごくいい走りをしているし、これからどんどん伸びていく可能性を感じますね。

ノビー:MotoGPクラスで唯一の日本人ライダー、小椋藍についてはどう思いますか?

ダニ:そう、小椋!彼にはとても良い意味で驚かされました。今年のセパンテストでは、彼を含めてルーキーたちや他のライダーの様子をじっくり見ていたんですが、小椋は特に集中力が際立っていました。ルーキーらしからぬ作業の進め方というか、静かに、でもとても真剣に作業している姿が印象的だったんです。だから開幕戦でスプリント4位、本戦で5位という結果を出したときも、「驚いた」というよりは、「やっぱりな」と思いましたね。

今のMotoGPでは、ドゥカティに乗れば誰でもある程度の結果が出せると言われる中で、彼はアプリリアに乗ってこれだけのパフォーマンスを見せている。それは本当に価値のあることだと思うよ。

※小椋 藍(おぐら あい)/2024年Moto2クラス年間チャンピオン。2025年よりTrackhouse Racing MotoGP Team(アプリリア)からMotoGPクラスに参戦。

ノビー:では最後に、日本のダイネーゼファンのみなさんにメッセージをいただけますか?

ダニ:ダイネーゼは、快適さ、美しいデザイン、そして最高品質、そのすべてがそろった“完璧なパッケージ”だと思います。何よりダイネーゼには、ライダーの身体を守るために積み重ねられてきた長い歴史があります。そこに、ダイネーゼを選ぶ大きな意味があるんです。ぜひ、その“魂”を、実際に手に取って、体感してみてください。

ノビー:パーフェクトです!ありがとうございました。

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