モーターサイクルライダーにとって、二輪での旅は人生最大の喜びのひとつです。もしそう思えない人がいるとしたら、きっと本当の意味で体験したことがないのでしょう。冗談はさておき、新しい地域や国を訪れるツーリングは、愛好家にとって常に大きな楽しみです。
ただし、その喜びを存分に味わうには、適切な準備、つまり正しい装いが欠かせません。モーターサイクル用ツーリングブーツも例外ではなく、賢く選べば、走行時の安心感を高めると同時に、バイクを降りた後も一日中快適さを保つことができます。
テクニカルなモーターサイクル用フットウェアがもたらす違い
テクニカルなモーターサイクル用フットウェアは、しばしば過小評価されがちですが、実際には安全性の面で最も重要な装備のひとつです。考えてみてください。ツーリング中や街乗りで、地面に足を着く回数はどれほどあるでしょうか。
数十回、場合によっては数百回にもなります。信号待ちや一時停止、停止状態からの取り回しなど、そのたびに足や足首には潜在的な危険が伴います。小さな砂利やわずかなバランスの崩れがあるだけで、十分な保護をしていなかったことを後悔することになりかねません。
そのため、常に認証を受けたモーターサイクル用フットウェアを着用するのが賢明です。都市部であっても、軽量で快適なシューズなら一日中履き続けられます。しかし、サドルにまたがる時間が長くなり、走行距離が増え、天候条件が多様になるほど、適切なプロテクションを備えた本格的なモーターサイクルブーツを選ぶ価値は高まります。

シューズ横方向剛性テスト
ここで明確にしておきたいのは、認証を受けたモーターサイクルブーツは、たとえスニーカーより頑丈であっても、コンバットブーツやハイキングブーツとはまったく別物だという点です。テクニカルなモーターサイクル用フットウェアの認証は、アッパーやソールの耐摩耗性、耐衝撃性、耐切創性、ソールの変形耐性など、多数の試験を含む欧州規格によって定められています。
これらすべてのテストをクリアしたブーツやシューズだけが、正真正銘の「プロテクティブ」と呼べるのです。
すべてのモーターサイクル用ツーリングブーツに共通する特徴
自分のニーズに合ったモーターサイクル用ツーリングブーツを選ぶ際には、すべてのタイプに共通する以下のポイントを考慮する必要があります。
1. 防水メンブレン
2. 通気性インソール
3. ブーツの高さ
1\. 防水モーターサイクル用ツーリングブーツ
現在では、防水メンブレンはモーターサイクル用ツーリングブーツに不可欠な要素と考えられています。ツーリングライダーはあらゆる状況に対応する必要があり、ジャケットやグローブ、パンツであれば携帯用の防水キットを使うこともできますが、天候に応じて履き替えるために予備のブーツを持ち運ぶのは現実的ではありません。
そのため、防水メンブレンが重要になります。Gore-Tex®が最も著名なブランドですが、他にもさまざまな防水ソリューションがあります。

メンブレンは本質的に妥協の産物であり、防水性を優先すれば通気性が犠牲になり、その逆もあり得ます。要するに、メンブレンとは無数の微細な孔を持つ素材で、湿気は外へ逃がしつつ、水滴は通さない構造です。防水性と通気性のどちらに比重が置かれるかは、その孔の数によって決まります。
2\. 通気性インソールを備えたモーターサイクル用ツーリングブーツ
長時間のライディング後も高い快適性を維持し、休憩時の短い歩行にも対応するためには、一見些細に思えるインソールにも注意を払う必要があります。インソールは、足から発生する熱や汗を適切に逃がす役割も担います。
足の甲側にはアッパーがあり、その構造によって通気性が左右されますが、足裏側にはゴム製のソールがあり、一定の多孔性はあっても通気性に優れているとは言えません。
その中間に位置するインソールは、ライディングや歩行による負担を軽減すると同時に、足裏の湿気を逃がす役割を果たす必要があります。
3\. ハイカットかローカットか?
これもツーリングブーツ選びの重要な要素で、それぞれの利点は明確です。ハイカットブーツは定番の選択肢で、高い保護性能を備え、長距離を走る本格的なトラベラーに最適です。カバー範囲が広く、安全性を最大限に確保できます。
ローカットブーツは、モーターサイクルシューズと従来型ブーツの中間的な存在です。軽量で扱いやすく、比較的ライトなツーリングや、長い徒歩移動を伴う立ち寄りが多い旅程に向いています。
ロード向けツーリングブーツの選び方 ― Daineseのアドバイス
ロードツーリング用モーターサイクルブーツで最も重視されるのは快適性です。熱心なツーリングライダーが早朝に出発し、日没後やそれ以降に戻ることは珍しくありません。これは単なる好みではなく、非常に重要な要素です。
ロードツーリングブーツの主目的 ― 長距離での快適性
ただし、快適性は細かく分けて考える必要があります。人間工学に基づく設計や素材の質感、丁寧な作りによって得られる履き心地としての快適性と、メンブレンの有無やアッパー素材のパンチングによって左右される温熱的な快適性は区別すべきです。これらは、寒冷な気候に対応できるかどうかを左右します。




ライダーが常に最良のコンディションでいられるよう、モーターサイクル用ツーリングブーツは両方の快適性を満たす必要があります。一日中履き続けても不快にならないことが重要で、場合によっては12時間以上同じブーツを履くこともあります。そのため、あらゆる観点から快適性が求められます。
そのため、上質な素材を使用し、フィット感を丁寧に設計し、必要な部分にはストレッチパネルを備えたブーツを選ぶことが重要です。プロテクターも不可欠で、動きに追従し、走行中に硬さや邪魔さを感じさせない設計でありながら、しっかりと機能しなければなりません。
この考え方のもと、Daineseはすねやくるぶし周辺を中心に、柔軟でありながら衝撃に強いインテグレーテッドプロテクターを開発しています。また、つま先、かかと、シフトレバー接触部には特別な補強が必要です。
ロードブーツに求められるグリップとコントロール ― ソール
アウトソールもツーリングブーツにおいて非常に重要で、長距離のロードツーリング中に多くの役割を果たします。濡れた状態でもステップや路面で十分なグリップを発揮する必要があります。そのため、用途に適した素材やデザインを持ち、ステップに接する部分やブレーキ・シフト操作を行う部分など、エリアごとに異なるテクスチャーを備えたソールを選ぶことが重要です。
さらに、フットペグから伝わる振動を吸収する必要もあります。1〜2時間程度であれば問題にならなくても、長時間に及ぶと大きな負担になります。そのため、サポート性と保護性を確保する十分な剛性を持ちつつ、過度に硬くならず、振動を緩和できる構造が求められます。

Fulcrum 3 Gore-Tex®
ロードブーツに求められる断熱性と実用性 ― アッパー
ロード向けツーリングブーツのアッパーには、さまざまな素材が使用されます。最もシンプルなのはマイクロファイバーですが、性能が劣るわけではありません。パンチング加工されたマイクロファイバーは、耐候性と通気性のバランスに優れた合成素材で、軽量でありながら四季を通じて使用できるブーツを実現します。
代替としてカウハイド(牛革)があり、より高品質で柔らかく、しっかりとした質感を持ち、通気性にも優れつつ、低温に対する断熱性はさらに高くなります。
モーターサイクルツーリングの楽しみの一部が、目的地を歩いて巡ることにあるのは言うまでもありません。そのため、ツーリングブーツにはバイクを降りた後の実用性も求められます。ソールやアッパー全体の構造もこれを考慮する必要があり、過度な剛性は歩行時の重さや不快感につながります。
人間工学に基づいたブーツを選ぶ ― フィッティングシステム
最後に、フィッティングシステムです。ロード向けツーリングブーツで最も実用的なのはサイドジッパーで、防水処理が施されていることが前提となります。さらに、上部には大型のベルクロストラップが備えられ、ふくらはぎの太さに合わせてシャフト幅をミリ単位で調整できます。



オン・オフロード対応アドベンチャーブーツ ― 注目すべきポイント
路面状況が変われば、求められる性能も変わります。アドベンチャー用モーターサイクルブーツでは、特にソール、プロテクション、フィッティング方式において、要件が大きく異なります。
専用アドベンチャーブーツソールの重要性
ソールには、ダートや濡れた路面でもフットペグと地面の両方で高いグリップを発揮するためのブロックパターンが必要です。ここでひとつアドバイスがあります。オフロード走行、つまりスタンディング走行を予定している場合は、マキシエンドロのフットペグに付いているゴムを外してください。
振動を抑えるためのものですが、濡れると非常に滑りやすくなります。多くの場合、数分で取り外せるので、安全性と安心感を高めるためにも試す価値があります。
アドベンチャー用モーターサイクルブーツに話を戻すと、アウトソールはグリップや操作性だけでなく、剛性の面でも重要です。ダートやトレイルでは、ほとんどの時間をスタンディングポジションで走行します。その際、体重の大部分が足と足首にかかり、ブーツにはそれを支える強度が求められます。
そのため、足裏や足首が不整地で過度に負担を受けないよう、より高い剛性が必要になります。
アドベンチャーブーツに求められる高い堅牢性と保護性能
この安定性への要求により、ブーツのアッパー、特に足首周辺にはより強固な補強が必要になります。最適な素材はカウハイドで、過酷な使用条件下でも、柔らかさ、快適性、強度、耐久性を兼ね備えています。
アドベンチャー用モーターサイクルブーツには、一般的により高い堅牢性が求められます。足を不整地や石の多い場所に置くことが多く、硬質なすねプロテクターも不可欠です。転倒時だけでなく、走行中でもフットペグや一部モデルのシリンダーなど、バイクの硬いパーツにすねを打つ可能性があります。
すねの前面には筋肉がないため、直撃の痛みを経験した人なら、その重要性がよく分かるでしょう。
すねに加え、つま先、かかと、ブーツ内側全体にも十分な補強が必要です。内側に高い耐摩耗性素材を使用したモデルを選ぶとよいでしょう。スタンディング走行では、脚や膝でバイクを挟むため、ブーツと車体の接触による摩擦が増え、より高い耐久性が求められます。





実用的なフィッティングと容易な着脱
アドベンチャー用モーターサイクルブーツのフィッティングは、オフロードブーツの構造を一部踏襲しており、金属製で長さ調整可能なバックルによって甲部分をしっかりと包み込み、高いフィット感を実現します。上位モデルでは、甲部分のフィットをミリ単位で調整できる内部シューレースを備えるものもあります。
一方、シャフト部分にはロードブーツ同様のベルクロパネルが必要で、パンツをブーツの内外どちらに入れる場合でも、幅を最適に調整できます。
アスファルトを好む場合でも、オフロード走行や探検への強い衝動を感じる場合でも、バイクとライダーの双方を適切に準備することが、心配のない楽しい体験への鍵となります。数あるモーターサイクル用ツーリング装備の中でも、ブーツは特に重要な要素です。
自分がどんな旅人でありたいのかを決めれば、選ぶべきブーツも自然と見えてくるでしょう。
