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ストーリーズ

エアロダイナミック・ハンプの進化史――プロテクターから先端技術の中枢へ

公開日:2026年2月7日
執筆者:ダイネーゼAGVジャパン編集部

お気に入りのサーキットのメインストレートを走り、スピードメーターは250km/hをはるかに超えています。タンクに身体を伏せた姿勢ですが、ほんの一瞬、呼吸を整えて筋肉を緩める余裕があります。もっとも、完全に楽というわけではありません。

いずれにせよ、伏せた姿勢における完璧な空力性能と、ヘルメットとスーツの一体化によって、頭や全身の位置を保つために無理に踏ん張る必要はありません。しかし、昔からずっとこうだったのでしょうか。

1980年代の終わりまでは、状況はまったく異なっていました。レーシングバイクやスポーツバイクにおける空力研究は、今から見れば原始的とも言える段階で、ウェアやプロテクターのメーカーも、まだ本格的に取り組んではいませんでした。

ストレートで正しい姿勢を保つことは決して容易ではなく、特に頭部は左右に振られがちで、まっすぐ保つために首の筋肉に大きな負担がかかっていたのです。

こうして1988年、Daineseのライダースーツの背中に「ハンプ」が登場しました。ただし、多くの人が想像するように、当初の目的は空力性能ではありませんでした。最初は安全性を重視し、発泡ゴムで作られていたのです。

記事内の走行シーン画像

バックプロテクターの延長として誕生したハンプ

1980年代の終わり頃も、最適なバックプロテクションの探求は続いていました。バックプロテクターはその10年前にサーキットへ持ち込まれ、モーターサイクル用として初めての本格的な個人用保護具として革命的な存在でした。

しかし、首の曲がり方によっては頸椎を損傷する恐れがあるため、最後の胸椎まで覆うことはできません。Daineseがこの問題への解決策として考案したのが、バックプロテクターでは届かない部位を守るための、柔らかい素材で作られたハンプでした。

高密度の発泡ゴムで作られたハンプは、優れた衝撃吸収性を備え、ライダーの動きを妨げない形状とすることで、最大限の自由度と快適性を確保していました。

これを初めてレースで使用したのは、ボローニャ出身のプロライダー、Pierfrancesco Chiliでした。1988年、彼は500ccクラスという当時の最高峰カテゴリーで、トップ10の常連として活躍します。

しかし、この新しいプロテクターの本当の可能性が評価されるまでには、さらに数年を要しました。その秘密を明らかにしたのは、肘を擦って走った最初のプロライダーとしてすでに歴史に名を刻んでいた、Jean Philippe Ruggiaだったのです。

空力研究の始まり

ハンプ付きの新しいスーツを試したフランス人ライダーは、伏せた姿勢で高速走行した際、頭部が格段に安定することに気づきました。頭の動きを常に修正する必要がなくなったことで、集中力の向上とエネルギーの節約という大きな利点が生まれたのです。

セッション終了時の首の筋肉疲労も大幅に軽減され、結果としてパフォーマンスと安全性の両面でメリットがもたらされました。

1988年当時のライディング写真

この時点以降、ハンプは空力性能と防護性能という二つの観点から研究され、二重の役割を持つデバイスへと進化していきます。風洞実験による研究により、1990年代半ばには形状が変更されました。

新しいハンプはより長く、先細りの形となり、タンク、ヘルメット、そしてライダーの背中をよりスムーズにつなぐ構造となったのです。

テクノロジーの集積:D-air®、Pro Com、そしてその先へ

新しいミレニアムの到来とともに、ハンプの役割はさらに重要性を増しました。新たに登場したDainese D-air®のテストを通じて、エアバッグシステムの制御ユニットやセンサーをハンプに収納するという発想がすぐに生まれたのです。

こうしてハンプは、次々と新しい目的を担う、テクノロジーを詰め込んだ本格的なコンテナへと変貌しました。

試作段階にとどまったいくつかのスーツでは、この背中の空間を、ライダーのバイタルサインを監視する多数のセンサーを備えた高機能インナースーツ「Pro Com」システムのセンサー収納部として使用しました。

さらに後には、こちらも試作に終わりましたが、冷却システムを内蔵したスーツが登場します。ハンプ部分に本格的なラジエーターを備え、最も過酷な暑さのレースで余分な熱を放散する仕組みでした。

D-air®の制御ユニット、Pro Com、そして前例のないラジエーターに続き、ハンプはハイドレーションバッグを収納する役割も担うようになります。現在もプロライダーが使用している新しいキャメルバッグは、内蔵された給水システムによってヘルメットと接続でき、走行中に直接水分補給が可能です。

これは、マレーシアのような高温多湿のグランプリで特に重宝される、勝敗を左右しかねないディテールとなっています。

ハンプ内部の電子機器構成

最新の進化:セーフティLED

最新の進化は2016年にさかのぼります。この年、新しいMugello Rスーツが発表されました。Mugello Rのハンプには、D-air®の制御ユニットやハイドレーションバッグに加え、転倒時に点灯する横方向のLEDが組み込まれています。

これにより、後続してくる他のライダーからの視認性が高まり、特に視界不良時には極めて重要な安全機能となります。

30年以上にわたり、ウェアとプロテクターはマシンそのものと歩調を合わせるように飛躍的な進化を遂げてきました。ハンプも例外ではありません。

単なる成形フォームの一部だったものが、今では極限のサーキット走行に不可欠な、極めて高度なテクノロジーと重要なソリューションを収める存在となり、プロライダーから熱心な愛好家まで幅広く支えています。

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ダイネーゼAGVジャパン編集部

ダイネーゼAGVジャパン編集部は、イタリア発のモーターサイクルウェアブランド「Dainese(ダイネーゼ)」およびヘルメットブランド「AGV(エージーブイ)」の日本正規輸入元として、製品情報・アスリートのインタビュー・ブランドの今を発信する編集チーム。 ビギナーからエキスパートまで、ライダーの安全性を最優先にした情報提供を行っています。

2026年2月7日公開
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