2020.04.09

ファビアン・バレル:3度の世界チャンピオンが語る情熱、成功、そして成長

"ダメダメ、Alex、ちょっと待って!上に戻ってもう一度やるから"

再スタートをきると、またシャッターの嵐。完璧主義者であるファビアン・バレルは、 全てのもの、全ての人に、そして何よりも自分自身にベストを求めます。
もしバイクの傾斜が十分でなければ、もし体が正しいポジションでなければ、一からやり直しです。

最初は1998年にジュニアとして、その後2004年と2005年にエリートライダーとして、計3回ダウンヒルの世界チャンピオンに輝きました。友人たちからFabと呼ばれる彼は、自身をラッキーだと感じています。

"基本、情熱的なんです。マウンテンバイクのことなら何でも好きですし、情熱のために全てを捧げるタイプの人間なんです。自分にとっては、スピードと自然、アドレナリンと努力がミックスされた完璧なスポーツです。

1月でも比較的温暖な日に海を臨むイタリアのリグーリア州の森は、1990年代から2000年に入った後の10年間も強い影響を与えたこのマウンテンバイク選手について知る絶好の場所です。

"子供の頃夢見たとおり、最高ですよ。情熱に生きているし、世界中を旅して、新しい人との出会いや素晴らしい文化に触れる。これ以上望むものはもうありません。
マウンテンバイクは色んなことを教えてくれるスポーツです。何よりもまず謙虚であること。あまり着目されない点ですが、プロとして、成功よりも失敗にぶち当たることの方が多いのです。失敗があって成長するんです。

だから謙虚であることは欠かせません。成功だって、想像とは違うんです。もちろん感激もひとしおですが、ほっとする気持ちの方が大きいです。表彰台のトップに登壇して虹色に輝くジャージーを着ると、全ての努力が報われます。
周りにいる人たちへの感謝から何か特別な感じがするのです。

Dainese_Barel_2019_166_HIGH

感情を込めてそう語るファビアン。この世界を心から愛していることが伝わってきます。

でも普通の人間と違うことも分かります。彼がマウンテンバイクに跨りペダルに足をのせると、サングラスのミラーレンズの向こうに普通の人では見られない炎が燃え上がります。表情も変化し、真剣な眼差しが稀にみる集中力を物語っています。

"メンタル力で本当に差が出ます。才能も加勢しますが、最後の仕上げ程度です。心に火をつけて集中力が最高レベルに達する、そのラインを見つけて越えていかれるような思考が必要です。
その時初めて全てを費やして、必要なリスクを負い、全力を出し切ることができると思います。

僕が恐怖を感じないなんて思わないでください!走行中はいつも怖いですよ。恐怖心にどう立ち向かうかがポイントです。僕は限界の状態で走行するのが大好きです。アドレナリンを放出して満足感が味わえます。"

もう20年以上、最高レベルに君臨しながら、辞める素振りは全く見られません。レースに戻るためなら、ありとあらゆる言い訳を使います。

今となってはもう学ぶものがないと皆が思うでしょう。

"本気で言ってます?マウンテンバイクに乗る時は、毎回何か新しい事を習得しようと思っています。まだ知らないマウンテンバイクの扱い方はたくさんあります。
成長することは生きること。僕たちのレースレベルで、ライバル同士が互いを尊敬し合う理由はそこにあります。

僕は、ニコラ・ヴイヨズやスティーブ・ピート、サム・ヒルと競いました。その中で信じられない瞬間を共有してきました。僕は彼らを打ち負かすために全力を注ぐ、そして彼らも同じです。これ以上のものはないと思います。大切なのは共に成長してきたということです。"

その間もファビアンはバイクで遊び、ジャンプしたりベストな姿勢を試してみたり・・・。ひざを擦りむき、手を真っ黒にして森の中で育った少年そのものです。
仕事のために今日ここにいて、真剣に取り組みながらも、やり直すためにマウンテンバイクを押しながら何度も坂を上ることが、彼にとっては苦にならないと分かりました。彼こそ、マウンテンバイクにおけるダイネーゼの顔です。

"本当のことを言うと、この話はもっと昔に遡るんですよ。1990年代からダイネーゼのプロテクターを着用していましたから。当時もダイネーゼのテクノロジーは最先端を行っていました。
僕たちのコラボレーションは数年前に再開しましたが、これからはもっと携わっていくつもりです。新しいプロテクターの開発は僕の仕事の最優先課題です。
新商品のレベルは非常に高く、アスリートのプロテクションの改良を継続的に進めていきます。

ダイネーゼのミッションは安全性の向上。そしてスポーツは限界の先を目指せるのです。これは基本です。それに貢献できることを嬉しく思っています。"

マウンテンバイクをやめる日がいつか来るんでしょうか?

"いや、ないでしょうね。"

ARCHIVE